自分が変わること

月刊「点字ジャーナル」連載コラム

2023-10-01から1ヶ月間の記事一覧

中村先生のこと

2016年5月号掲載 毎日新聞夕刊編集部編集委員(当時)/藤原章生 私が団塊の世代を知ったのは中学2年の春だった。1975年のことだ。当時、「団塊の世代」という言葉はなかったが、今から思うとあの先生は、その世代の象徴のような人だった。 その年の春、母…

マルガリータを再び

2016年4月号掲載 毎日新聞夕刊編集部編集委員(当時)/藤原章生 「あなた、私の何が知りたいの?」 レモンの木を見ていたら、そんな声が聞こえた。スペイン語で語りかける、やや低音のはっきりとした声だった。 そのころ暮らしていたメキシコの自宅の台所の…

肩の力を抜いて

2016年3月号掲載 毎日新聞夕刊編集部編集委員(当時)/藤原章生 先日、空手の昇段試験に通り、なんとか四段になった。四段などというと強そうに思われるかも知れないが、そうではない。私がやっているのは、沖縄発祥の糸東(しとう)流で、組手もやるが、大…

利き腕で書かない作家

2016年2月号掲載 毎日新聞夕刊編集部編集委員(当時)/藤原章生 先日、作家、村松友視さん(75)に会うことになり、作品をまとめて読んだ。40歳のデビューから35年あまりで180冊も書いた人だが、「小説は苦手なタイプだなって思い始めているんです」と当人…

テロと異常気象

2016年1月号掲載 毎日新聞夕刊編集部編集委員(当時)/藤原章生 来年2016年は申年。先日、新聞社の編集部から「サルと日本人」というテーマで何か書けと注文があった。すぐに図書館に行き、サルの本をあれこれ読んだ。「エテ公の語源は、関西方面の古い言葉…

世代論と親父

2015年12月号掲載 毎日新聞夕刊編集部編集委員(当時)/藤原章生 先日、作家の加賀乙彦さんにインタビューした。事前に長編作品「宣告」やエッセイ集、自伝を読み、感銘を受けたが、昭和4年(1929年)4月生まれという経歴に興味を抱いた。私の父と同じだ…

直感とダイヤモンド

2015年11月号掲載 毎日新聞夕刊編集部編集委員(当時)/藤原章生 引っかかっている考えがある。私が思いついた考え、「直感はダイアモンド」というものだ。アフリカでダイヤモンドのことを調べていた1990年代の終わりのことだ。 もっとも硬い鉱物、ダイヤモ…

自分からは縁は切らない

2015年10月号掲載 毎日新聞夕刊編集部編集委員(当時)/藤原章生 コロンビアの友人、ルイス(仮名)から嬉しい便りがきた。便りといっても、パソコンでの対話、チャットである。 「やあ、元気か? いい知らせがあるんだ」。仕事に行く準備をしていたら、ル…

桑原武夫が考えていたこと

2015年9月号掲載 毎日新聞夕刊編集部編集委員(当時)/藤原章生 今年の夏休みの宿題は桑原武夫だった。 私がいま書いている毎日新聞の夕刊特集ワイド面では、記者が交替で休みをとるため、お盆前に計10本、亡くなった著名人の追悼記を書く。編集側が10人を…