自分が変わること

月刊「点字ジャーナル」連載コラム

2023-04-01から1ヶ月間の記事一覧

近未来が見えない(その1)

2011年12月号掲載 毎日新聞ローマ支局長/藤原章生(当時) 「まあ、今が一番いいときかもしれないね」 これは小津安二郎の映画「麦秋」の中のセリフだ。私のうろ覚えなので正確ではないが、こんな場面だ。日曜日、鎌倉の家から上野に行楽に来た老夫婦が夕暮…

よくわからない仙人とお化け(その4)

2011年11月号掲載 毎日新聞ローマ支局長/藤原章生(当時) 孫俊清さんの言う通り、あの土方焼けのオヤジたちが本当に仙人なら、なぜあのとき私の前に現れたのか。天川村の座敷には私のほかに3人いたのに、どうして、私にだけ見えたのか。何か理由があるは…

よくわからない仙人とお化け(その3)

2011年10月号掲載 毎日新聞ローマ支局長/藤原章生(当時) 奈良県の天川村で、存在しないはずの白装束の男たち、よく日焼けした50年輩の男たちを私は目にした。「仙人」と呼ばれる山口神直さんの話を聞いていたとき、ドドドッという感じで私の後ろのふすま…

よくわからない仙人とお化け(その2)

2011年9月号掲載 毎日新聞ローマ支局長/藤原章生(当時) あのオヤジたちは何だったのか。といっても、私も十分オヤジなのだが、あのよく日焼けしたオヤジ、今の日本、特に東京あたりにはあまりいない「土方」といった風情の白装束の男たち。あの3人は何…

よくわからない仙人とお化け(その1)

2011年8月号掲載 毎日新聞ローマ支局長/藤原章生(当時) 夏なので、少しお化けの話を。私は一度だけ、お化けを見たことがある。それは白い修験者の恰好をした3人の中年で、はっきりと現れた。錯覚だろうと、普通ならすぐに忘れるところだが、そのときは…

ささのは さらさら

2011年7月号掲載 毎日新聞ローマ支局長/藤原章生(当時) この5月、リビアでちょっと困ったことがあった。東部にあるベンガジという町で知り合い、しばらくともに行動した30歳前後の男たちに、歌でも詩でもいいから日本語のフレーズをおしえてほしいと…

森一久さんのこと(その4)

2011年6月号掲載 毎日新聞ローマ支局長/藤原章生(当時) 記憶の仕組みを私はよくは知らない。不思議なのは、幾ら新しい記憶が積み重なっても、いつまでも脳みその奥へと退かず、何度も現れる記憶があるということだ。それは光景であったり、人の話し声、…

大災害を目にした最初の直感

2011年5月号掲載 毎日新聞ローマ支局長/藤原章生(当時) 前回の話を読んでいただいた方にお許しいただきたいのは、話が横道にそれることだ。シリーズ「森一久さんのこと」を先に延ばし、今回は大災害のことを書きたい。原子力に携わった森一久さん、湯川…