自分が変わること

月刊「点字ジャーナル」連載コラム

2023-06-01から1ヶ月間の記事一覧

望遠レンズと広角レンズ

2013年6月号掲載 毎日新聞郡山通信部長/藤原章生(当時) アフリカにいたころ、こんなことを思った。 貧しい人たちを見るとき、例えば、ナイジェリアの貧民街を高台から遠望すると、そこにうごめく人びとの暮らしがあまりにひどく思え、近づくのが恐くなる…

故郷(その3)

2013年5月号掲載 毎日新聞郡山通信部長/藤原章生(当時) 小学校6年の秋だった。今はもうない、ねずみ色の立派な洋館、日比谷映画で『ビリー・ザ・キッド/21歳の生涯』(1973年)を見た。当時、親に放任され、ませた子どもだった私は、クラス中から長期に…

故郷(その2)

2013年4月号掲載 毎日新聞郡山通信部長/藤原章生(当時) 一期一会。NHKの元カイロ支局長でいまはニュース解説委員長をしている柳澤秀夫さんに会った時のことだ。2005年、私はアフリカを舞台にした本でノンフィクション賞を受け、それをラジオ番組で紹介…

故郷(その1)

2013年3月号掲載 毎日新聞夕刊編集部記者/藤原章生(当時) 長く故郷を考えたことがなかった。 こんな話がある。ギリシャの映画監督、テオ・アンゲロプロスのいくつかの作品に「いくつ国境を越えれば故郷にたどりつけるのか」という言葉が語られる。単に「…

梅原猛と憑依

2013年2月号掲載 毎日新聞夕刊編集部記者/藤原章生(当時) 猛スピードで原稿が書ければどんなに楽だろう。ペンの時代なら、さらさらっとだが、今なら自然に指が動き、カタカタとキーボードのはじける音が小気味よく続く。 だが、難しい。記者になってそろ…

佐藤愛子さんと会う(その3)

2013年1月号掲載 毎日新聞夕刊編集部記者/藤原章生(当時) インタビュー記事が『毎日新聞』に載ってしばらくして、佐藤愛子さんからはがきが届いた。今度、またゆっくりとおしゃべりに来て下さいと書かれていた。 佐藤さんは89歳なのにとても若々しく、よ…

佐藤愛子さんと会う(その2)

2012年12月号掲載 毎日新聞夕刊編集部記者/藤原章生(当時) 作家の佐藤愛子さんは、数年前までテレビで引っ張りだこだった霊能者、江原啓之(えはらひろゆき)さんについて「霊視ができなくなったんだと思う」と語った。江原さんとかれこれ20年のつき合い…

佐藤愛子さんと会う(その1)

2012年11月号掲載 毎日新聞夕刊編集部記者/藤原章生(当時) ここ最近、どういうわけかスピリチュアル好いている。そういう人達が取材対象になることが多い。私はこの春から毎日新聞の特集ワイド面に記事を書いているが、テーマやインタビュー相手を自分で…

戦場報道、死の地帯と大義

2012年10月号掲載 毎日新聞夕刊編集部記者/藤原章生(当時) 先日、フリージャーナリストの山本美香さんがシリアで銃撃され亡くなった。どこかですれ違っているのかもしれないが、面識はない。第一報を朝方、毎日新聞の編集局で同僚から聞かされたが、特段…