自分が変わること

月刊「点字ジャーナル」連載コラム

2024-01-01から1ヶ月間の記事一覧

富士のお鉢の中で

2018年6月号掲載 毎日新聞夕刊報道グループ記者(当時)/藤原章生 私はうとうと昼寝をするのが大好きだ。別に昼でなくてもいい。夜でもいい。ふと眠り落ちてしまう、うたた寝が好きなのだ。十中八九、何もないが、ごく稀にこんなことがある。 高校生1年の…

嘘が人の顔を変える

2018年5月号掲載 毎日新聞夕刊報道グループ記者(当時)/藤原章生 人の顔はなぜこうも変わるのか。何があのような顔にしてしまうのか。 イギリスの首相にトニー・ブレアがいた。彼が出てきた1990年代、南アフリカにいた私はニュースで毎日のように彼の顔を…

親からの距離、人からの距離

2018年4月号掲載 毎日新聞夕刊報道グループ記者(当時)/藤原章生 25歳で企業に就職したとき、心理テストを受けさせられた。旧財閥系の大手で、定年まで勤め上げるのが当然のような会社だった。一人ひとりの気質を正確に押さえておく必要があったのか、単に…

白虎隊を尊べるか

2018年月3号掲載 毎日新聞夕刊報道グループ記者(当時)/藤原章生 「お前は何もわかってないんだよ。だいたい、朝日や毎日みたいな左巻きの連中がいかにも言いそうなことじゃねえか、え? いつもの『軍靴の足音が聞こえてくる』だろ? そんな連中と働いてっ…

自己嫌悪からの解放

2018年月2号掲載 毎日新聞夕刊報道グループ記者(当時)/藤原章生 私は昔から何でも自分からやりたがるくせにすぐ飽きる癖があり、未だに治らない。「おっちょこちょいは一生治らない」と言うが、あきっぽさもそうなのだ。 幼稚園のころ、近所の家で女の子…

そう言えば、つらかった30代

2018年月1号掲載 毎日新聞夕刊報道グループ記者(当時)/藤原章生 ある人がこんな話をした。「86歳の母に、いつが一番楽しかったか聞いたんです。そしたら50代って言ってました。子育ても終え、まだ体力もあって、怖いものもなくなったからだと」 私も50代…

恐怖は老けるのか

2017年11月号掲載 毎日新聞夕刊報道グループ記者(当時)/藤原章生 最近、山で考えた。年を重ねても死の恐怖だけは変わらないのでは、と。 私が好きなのは夏は沢登りに岩登り。冬は壁登りと山スキーだ。頂上に立ちたいわけではない。「百名山制覇」といった…