自分が変わること

月刊「点字ジャーナル」連載コラム

2024-07-01から1ヶ月間の記事一覧

つましくも、ドロップアウトできた1980年

2022年11月号掲載 毎日新聞契約記者/藤原章生 1980年ごろの日本社会の雰囲気をうまく書けないだろうかと、1年ほど前から考えてきた。というのも、昨年秋から今年春まで新聞連載した評伝、「酔いどれクライマー」の舞台がこの時代だったからだ。主人公の永田…

東京ならではの独特の雰囲気

2022年9月号掲載 毎日新聞契約記者/藤原章生 しばらくぶりに海外から戻ると、日本、特に私が暮らす東京には独特のムード、雰囲気があることに気づく。空から見た日本はとにかく緑が多い。アメリカのロサンゼルスなど砂漠に切り開いた街から戻ると、田んぼや…

人間はもともとみないい人なんだ

2022年8月号掲載 毎日新聞契約記者/藤原章生 南米を旅行しながら「ブルネラブレ(vulnerable)」という言葉について考えた。あまり会話では使われないが、英語にも同じブルネラブルという言葉がある。辞書で調べてきた単語なので、「ぜい弱さ」という言葉が…

近未来への鍵、リベルタード

2022年7月号掲載 毎日新聞契約記者/藤原章生 今いる南米のチリで、あらゆるチリ人たちからよく聞いたスペイン語は、リベルタード(libertad)だった。日本語に訳せば「自由」だが、束縛から逃れる「解放」や「フリー」といった意味で気軽に使われる。「首都…

チリに残っていた「ヒッピー文化」

2022年6月号掲載 毎日新聞契約記者/藤原章生 私が小学校に入ったころだから1968年の夏、「ピンキーとキラーズ」というグループの歌「恋の季節」が大ヒットした。「忘れられないの/あの人が好きよ/青いシャツ着てさ/海を見てたわ」と歌う女性、ピンキーを…

親指をなくした息子

2022年5月号掲載 毎日新聞契約記者/藤原章生 チリに来て、そろそろ1カ月。ロサンゼルス経由でサンチャゴに着いたのが3月8日の朝で、心配していたPCR検査も難なくクリアーした。40年もこの地に暮らす学生時代の先輩、堤亮(つつみまこと)さんに会い、…

ラテンアメリカを再発見しに

2022年4月号掲載 毎日新聞契約記者/藤原章生 報道の仕事をしていると、ウクライナ侵攻といった大きなニュースがあると少し後ろめたくなる。特派員時代、戦争というと自分の領域以外のところにもよく現場取材に行っていたので、申しわけない気になるのだ。そ…

本当の先生にはがきを出す

2022年3月号掲載 毎日新聞契約記者/藤原章生 この1月、うれしいことがあった。小学校4、5年の担任だったN先生と連絡がとれた。1978年正月にもらった賀状の住所に、「お元気ですか、本当にお世話になりました」と書いて年賀状を送ったら、もうおられない…