自分が変わること

月刊「点字ジャーナル」連載コラム

2023-08-01から1ヶ月間の記事一覧

つきものが落ちたような感覚

2014年12月号掲載 毎日新聞地方部編集委員/藤原章生(当時) ここ2週間余り、風邪で臥せっていた。のどの痛みから始まり、37度台の熱にせき、たんがともなう、典型的な風邪だが、ずいぶんと長い。風邪薬や抗生物質をのんでも完治しない。単に抵抗力が落ち…

県民の声、記者次第

2014年11月号掲載 毎日新聞地方部編集委員/藤原章生(当時) 先日、報道関係者の集まりに呼ばれた。福島を報じている者同士、自由に意見を交わすのが目的だという。会場に遅れていくと、何人かがすでに発表を終え、10数人が意見を交わしていた。流れが読め…

新聞原稿は夜明け前の快感

2014年10月号掲載 毎日新聞地方部編集委員/藤原章生(当時) 原稿書きでよく思い出すのが、次のようなパターンだ。脳の物質が何か動いているのだろうか。必ず心地よさ、快感が伴うため、肉感のような生々しい感触とともに思い出される。 ラテンアメリカにい…

赤瀬川さんの文体(その4)

2014年9月号掲載 毎日新聞地方部編集委員/藤原章生(当時) 赤瀬川原平さんは、あえて饒舌にというより、自分の思考の流れを淡々とそのまま書いている。つまり、「昭和軽薄体」という80年代に広がった文体とは一線を画している、と私は思う。 大事なのは赤…

赤瀬川さんの文体(その3)

2014年8月号掲載 毎日新聞地方部編集委員/藤原章生(当時) 赤瀬川原平さんがプロとして物を書き始めたのは1975年のこと。1937年生まれなので、38歳だ。その5年後、80年に発表し、翌年に芥川賞を受けた「父が消えた」に登場する25歳の編集者のモデル、作家…

赤瀬川さんの文体(その2)

2014年7月号掲載 毎日新聞地方部編集委員/藤原章生(当時) 才能だろう。赤瀬川さんは物を書き始めて5年で、小説に取り組みわずか2年で芥川賞を受けた。尾辻克彦名で出した「父が消えた」という作品だ。 克彦は本名で、尾辻は父方の本家の名字だそうだ。…

赤瀬川さんの文体(その1)

2014年6月号掲載 毎日新聞地方部編集委員/藤原章生(当時) 作家の赤瀬川原平さん(77)の文体がここ数年ちょっと変わった。彼の持ち味は、誰もが見過ごしているような当たり前のことをとらえるときの独特な感性、日常の言葉一つとっても普通の人が気づかな…

ある悪意のスケッチ

2014年5月号掲載 毎日新聞地方部編集委員/藤原章生(当時) 先日、ちょっと嫌な事があった。トラブルというほどではないが、後味が悪かった。腹が立つ半面、物を書く仕事をしていると、こういう事はちょっと嬉しい。人間を考えるための、生(なま)の、珍し…

陣地を離れる悲しい春

2014年4月号掲載 毎日新聞郡山通信部長/藤原章生(当時) この連載を始めたのは、新聞社でローマ特派員をしていた2009年6月。今から5年前のことだ。その後、2012年春に東京に戻り、ローマに行く前に書いていた夕刊特集ワイド面や、「イマジン」というタイ…