自分が変わること

月刊「点字ジャーナル」連載コラム

2023-03-01から1ヶ月間の記事一覧

森一久さんのこと(その3)

2011年4月号掲載 毎日新聞ローマ支局長/藤原章生(当時) 「あれは5月やったなあ。確か、連休のあとだった。何の日やったか、そう、子供の日や。西村先生に呼ばれたんやわ」 森一久さんの同級生、水田泰次さんは昭和20年5月、京大工学部治金(やきん)学…

森一久さんのこと(その2)

2011年3月号掲載 毎日新聞ローマ支局長/藤原章生(当時) 「あれは何だったのか」「どういう意味だったのか」。当時81歳の森一久さんは、そんな言い回しをよくする。科学者出身だけあって、何かを言いきらない人だった。必ず別の可能性があるという考え方…

森一久さんのこと(その1)

2011年2月号掲載 毎日新聞ローマ支局長/藤原章生(当時) 昨年2月3日、森一久さんが亡くなった。ローマに暮らす私はしばらくたって、それを知った。海外暮らしで残念なのは、人の訃報に接した時だ。死に目に会えなかったのもあるが、日本に住んでいれば、…

信じる人にひかれて(その9:最終)

2011年1月号掲載 毎日新聞ローマ支局長/藤原章生(当時) 奇妙な写真を撮ったり、行く先々で宗教的な人に出会い、少しずつだが、信じる人々にひかれるようになった。そして、彼らが信じている神様とは何だろうかと考える。 しかし、結論から言えば、私には…

信じる人にひかれて(その8)

2010年12月号掲載 毎日新聞ローマ支局長/藤原章生(当時) フロリダの田舎町で、私はイラクで目にした惨事をジムに話した。夕日が当たり、芝生をオレンジに染めていた。砂塵まみれのイラクとはまったく違う理想郷のような風景だった。でも考えてみたら、全…

信じる人にひかれて(その7)

2010年11月号掲載 毎日新聞ローマ支局長/藤原章生 「人生で起きることはすべて、偶然ではない」(飯田亮介訳)。最近読んだことばだ。宗教関係の人ではない。2004年にがんで亡くなったイタリアのジャーナリスト、ティツィアーノ・テルツァーニがそう書いて…

信じる人にひかれて(その6)

2010年10月号掲載 毎日新聞ローマ支局長/藤原章生(当時) 不思議なことがあるもんだ。こんな一言で済ますような話をカトリックの総本山、バチカンは躍起になって「証明」しようとする。カギカッコをつけたのは、結局のところ証明などできないと思うからだ…

信じる人にひかれて(その5)

2010年9月号掲載 毎日新聞ローマ支局長/藤原章生(当時) 2003年7月、私はボリビアで奇妙な写真を撮影し、2つ目の物的証拠を手に入れた。正確に言えば、証拠ではない。「世の中には説明できない現象がある」と考えさせる材料だ。 最初の写真は2000年、南…

信じる人にひかれて(その4)

2010年8月号掲載 毎日新聞ローマ支局長/藤原章生(当時) オレンジの光で女性の体が透けてしまったボリビアの写真。それについて小林芙蓉さんはそれを「良くないことです」と即断した。その女性に何か不運なこと、不幸なことが起きると。こういうのが私は…