自分が変わること

月刊「点字ジャーナル」連載コラム

2024-02-01から1ヶ月間の記事一覧

日本人の根に先祖信仰はあるのか

2019年3月号掲載 毎日新聞夕刊報道グループ記者(当時)/藤原章生 先日、映画を見ていてわっと涙が出てきた。子供のころから映画やドラマ、音楽などでよく泣くほうだが、年を取っても変わらない。むしろ増えた気がする。 何の変哲もない場面だった。「盆唄…

近代化されていない日本人 

2019年2月号掲載 毎日新聞夕刊報道グループ記者(当時)/藤原章生 若槻泰雄さんが亡くなった。海外への移民や引き揚げ者の問題をめぐって政府を厳しく批判し、日本人とは何かを問うてきた大人(たいじん)だ。国家賠償訴訟にも積極的に関わってきたため、政…

心の底からわいてくる

2019年1月号掲載 毎日新聞夕刊報道グループ記者(当時)/藤原章生 夢の中では時間が歪む。この前、朝方目覚めて変な気分になった。見知らぬ老若男女4、5人と飛行船のようなものに乗ってどこかに戻っている。空港のような所に降り立ち、2日後にまたそこで…

人間の悪意が席巻する時代

2018年12月号掲載 毎日新聞夕刊報道グループ記者(当時)/藤原章生 今からほぼ30年前、1989年5月に天安門事件が起きた。私も含め多くの人々の記憶に残るのは戦車の前に立つ中国人の姿だろう。戦車を阻もうと一人の男が立ち、戦車がその男を避けて前に進も…

高みから見下ろす自分

2018年11月号掲載 毎日新聞夕刊報道グループ記者(当時)/藤原章生 記憶の中でも特によく覚えている光景がある。何度も思い出すたびに残像はより強くなり、元の型は多少変わるだろうが、忘れがたい記憶となっていく。 そんな中の一つにこんなものがある。 …

オウム処刑の沈鬱

2018年10月号掲載 毎日新聞夕刊報道グループ記者(当時)/藤原章生 この7月、オウム真理教の幹部ら13人の死刑が執行された。最初の7人が首を絞められた朝、ラジオでまず教祖の処刑を知った。嫌な気分になった。 その日は金曜日で、ドイツの哲学者のインタ…

丘陵の町の尚子さん

2018年9月号掲載 毎日新聞夕刊報道グループ記者(当時)/藤原章生 日曜日の午後、思い立って玉川学園の尚子さんを訪ねた。芸術家、赤瀬川原平さんの奥さんである。赤瀬川さんが亡くなったのは2014年10月26日。あれからもうすぐ4年である。 「奥さん」と書…

語る脳と、書く脳の違い

2018年8月号掲載 毎日新聞夕刊報道グループ記者(当時)/藤原章生 最近、面白いことに気づいた。自分の脳の中の話だ。 人は瞬時にいろんなことを考えている。そこに脈絡はない。以前、メキシコの作家で、名作「アモーレス・ペロス(犬の愛)」や「バベル」…

「お前は自分のことしか考えていない」 

2018年7月号掲載 毎日新聞夕刊報道グループ記者(当時)/藤原章生 男3人で丹沢の沢登りに行ったときのこと。私が前を歩いていると、二人のこんな会話が聞こえた。 「いつも藤原さんに沢に連れてってもらってるんですよ。今年の冬は山スキーにも」「へえ、…