自分が変わること

月刊「点字ジャーナル」連載コラム

2023-09-01から1ヶ月間の記事一覧

かた屋はどこへ行った

2015年8月号掲載 毎日新聞夕刊編集部編集委員(当時)/藤原章生 先日、「かた屋」を思い出した。それは私が10歳のころの冬だった。通っていた東京の北のはずれ、足立区の小学校の前にある空き地に、かた屋はやってきた。 というのも、小学2年のとき、東京…

何もしない日々

2015年7月号掲載 毎日新聞夕刊編集部編集委員(当時)/藤原章生 長期休暇をとってこの3週間、米国と南米のコロンビアにいた。毎日新聞社が勤続20年の社員に与える「リフレッシュ休暇」で、私は26年を越え、ようやく取ることができた。考えてみたら、入社以…

戦場写真と歌謡曲

2015年6月号掲載 毎日新聞夕刊編集部編集委員(当時)/藤原章生 ベトナム戦争でまず浮かぶのは「モノクロ写真」だ。割と硬め、白黒の陰影がはっきりしていながら、人が瞬発するときの疾走感を感じさせる写真。 裸の痩せた少女が、両手を広げ、絶叫しながら…

放射能は「未来の武器」

2015年5月号掲載 毎日新聞夕刊編集部編集委員(当時)/藤原章生 「高校1年の時ね、僕、『アサヒグラフ』の懸賞マンガに投稿したことがあってね。放射能の絵なんだけど」 先日、東京・お茶の水のホテルで会った佐藤文隆さん(77)が面白いことを言った。佐…

原子力から浮かび上がる日本人

2015年4月号掲載 毎日新聞夕刊編集部編集委員(当時)/藤原章生 「原子力を知るってことはね、日本の文明を知るってことだよ」。中村政雄さんにそう言われたとき、一瞬、えっ? と思ったが、多分そうなんだろうと妙に納得したのを覚えている。 それは一昨年…

1948年の空気

2015年3月号掲載 毎日新聞地方部編集委員/藤原章生(当時) 1948年、昭和23年の東京はどんな風だったのか。時代の「空気」、もしそんなものがあるなら、それを知りたい。昨年暮れから、あれこれ探ってきたが、難しい。それは私が生まれる1961年の13年も前の…

秋田での出会い(その2)

2015年2月号掲載 毎日新聞地方部編集委員/藤原章生(当時) 2014年11月末、選挙取材の応援で秋田市にいたとき、県立美術館の展覧会「てさぐる」で鎌田順子さんと知り合い、館内のカフェで話を聞いた。視覚障害者が展示品を触りながら、健常者を案内する趣向…

秋田での出会い(その1)

2015年1月号掲載 毎日新聞地方部編集委員/藤原章生(当時) その午後、私は疲れていた。秋田県に来て、まる1週間あちこち回り、働き詰めだったからだろう。いや、緊張が抜けたのかもしれない。新しい土地に来たときは興奮している。正確に言えば、自分を発…