自分が変わること

月刊「点字ジャーナル」連載コラム

2023-11-01から1ヶ月間の記事一覧

むき出しの怒りについて

2017年2月号掲載 毎日新聞夕刊編集部編集委員(当時)/藤原章生 自分はかなり気分屋だとは認めるが、人間としての大方の負の感情は自分自身の中で抑えることができる。悲しみ、憎しみ、恨み、ねたみ、そねみ、あるいは恐怖といったことは、理性でどうにか克…

ボブ・ディランにはまる理由

2017年1月号掲載 毎日新聞夕刊編集部編集委員(当時)/藤原章生 ボブ・ディランのノーベル文学賞授賞決定からこの方、彼の魅力は一体なんなのかを考えている。声はアナグマの叫び声のようなギンギンしたしゃがれ声だし、歌もうまいとは言えない。なのに、な…

いつまでも耳に残る歌

2016年12月号掲載 毎日新聞夕刊編集部編集委員(当時)/藤原章生 「詩についてどう思います? 日々の生活や自分の言葉に詩が何か影響を与えていますか」――。懇意のラジオ局のプロデューサーと電話で話していたとき、おもむろにそんなことを聞かれた。その人…

32年ぶりの魔力

2016年11月号掲載 毎日新聞夕刊編集部編集委員(当時)/藤原章生 先日、久しぶりに海外に行ってきた。ネパール・ヒマラヤだ。遅い夏休みをとり、私が福島県に駐在していた時に入会した郡山勤労者山岳会の仲間8人と1週間ほどのトレッキングを楽しんだ。65…

山登りの権威と民主化

2016年10月号掲載 毎日新聞夕刊編集部編集委員(当時)/藤原章生 この夏、毎日新聞社の喫煙室にいたら、50代半ばの同僚男性たちが山登りの話をしていた。「いやあ、週末行ってきました」「どうだった」「登りは何とかなったんですけど、下りがきつかった」…

ひとりで消えたかった父

2016年9月号掲載 毎日新聞夕刊編集部編集委員(当時)/藤原章生 私の父は死ぬ直前、子どもたちはおろか妻、つまり私の母もそばに寄せつけず、一人でひがな、花瓶の百合の花を見ていた。12年前のことだ。当時、私はメキシコに暮らし、死に目に会えなかったの…

なぜ群舞にひかれるのか

2016年8月号掲載 毎日新聞夕刊編集部編集委員(当時)/藤原章生 先日、新橋演舞場に「レビュー夏の踊り」を見に行った。大阪を拠点にするOSK日本歌劇団の3日間にわたる東京公演の千秋楽。大阪松竹歌劇団、OSKに所属していた、友人のお母さんに招待し…

また逢う日まで

2016年7月号掲載 毎日新聞夕刊編集部編集委員(当時)/藤原章生 先日、ゲイの老人ホームを舞台にした映画「メゾン・ド・ヒミコ」を見た。やや冗長で、演出が過剰な感じがしたが、一ついい場面があった。 ディスコというかクラブでのシーンだ。長いイントロ…

戸塚さんと日本人村

2016年6月号掲載 毎日新聞夕刊編集部編集委員(当時)/藤原章生 本誌「点字ジャーナル」の編集者、戸塚辰永さんがドイツでエッセーを出版すると知り、インタビューをしたいと思った。実は彼は私がこの連載コラムを始めたころの担当で、すでに何度かお目にか…